AstroTrac TT320X
ポータブル赤道儀としてはイギリスのポタ赤専業の会社であるAstroTracは異色です。
その異色なTT320Xを買ったのは日食を前にした2009年2月でこのブログにもたびたび登場します。
日食旅行用の機材でしたが便利なので毎度利用しています。
繰り返しにもなりますが使用感をあげてみましょう。
1.軽いが長い
アルミの板でできており1kg(TT320X-AG)と軽いです。
全長425mmと長いのですが三脚と共に持ち歩くことを考えれば許容範囲でしょう。
ただし、まとまりが悪い形状です。
2.精度が出ないのは誰のせい?
肝心なこととしてTT320Xの訴求点は最高で500mmを銀塩なら5分間追尾できる精度です。
ピン間距離が300mmということは直径600mmのギヤにも匹敵するということです。
実際恒星時演算をして正確にトラッキングしていると思います。
しかし、さまざまな要因で精度は実現されません。
(1) 少なくとも直輸入版は極軸望遠鏡の極が出ていない可能性があります。
そんな極軸では精度は出ませんから自力で軸調整をする必要があります。
(2) 仕様では15kgの負荷に耐えることになっています。
実際は重いデジカメだとトルクが負けることがあります。
SONYαNEX-5を調達したのはカメラの軽量化が非常に効果的だからです。
(3) 最も重要なのは多少の三脚でもたわみは避けられないことです。
想像以上に影響があるので、ポタ赤でも足回りを固めないと無駄が増えます。
3.極軸望遠鏡にご注意
上の事情で対象を変える毎に極軸を調べる必要があります。
では、極軸望遠鏡はつけたままにしておけばよさそうなものですが、露がレンズに付くと困るのでまめに取り外すことになります。
極望はネオジム磁石で付けてあるだけなので脱着は楽です。
現場ではしばしば取り外すことを忘れるのですが極望をつけたままで作業すると磁石で付けてあるだけなのでちょっと当たっただけで落下します。
国際光器(日本代理店)はこれに対して独自にストッパーを提供しています。
穴をあげたスポンジでも代用できます。
4.エネループで一晩
TT320Xの電源は12Vです。
天文機材では常識的な電圧です。
セットで買うと単三8本の電池ボックスとシガーソケットケーブルが付属します。
ところが今時はエネループなのですよ。
1本あたり1.2Vしか電圧がありませんから8本では10Vにとどきません。
このため単三電池10本の電池ボックスを使っています。
10時間程度もつのですが冬至前後はバッテリー切れが待っています。
夏でもジプシー二日目は電池切れです。
5.月食・日食撮影に向かない
アストロトラックは恒星時のほかに太陽追尾と月追尾に変速できます。
月の移動は意外と早いので月食には重宝しそうです・・・が、実際は中途半端です。
2011年12月10日の月食は4時間にわたる天文ショーです。
その一部始終を月追尾モードで記録できたらすばらしいと思うのですが、AstroTracの駆動時間は2時間だけ。
こればかりは改良不能なので最大のネックになります。
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初めまして、広島単身赴任のルーターと申します。
大変失礼なのですが、去る、5月3日〜4日にかけて山口県の皇座山に出陣されていませんでしたか?AstroTrakを検索していましたらこちらのサイトがヒットしました。
お使いのカメラがNEX、また、ポタ赤がAstroTrakだったので、そうかなと・・・
人違いでしたら大変申し訳ありません。
もし、間違いでなければ、メルアドにメール下さると幸いです。
以上、突然大変失礼致しました。
投稿: ルーター | 2014年5月 5日 (月) 08時32分